6月26日 (日)  ロランドさん

昨日吉祥寺でアカパナ(前称;ムシカ・デ・マエストロス6重奏団)の一般公演がありました。世界屈指のケーナ奏者ロランド・エンシーナスがラパスで17年前に創立したオーケストラ「ムシカ・デ・マエストロス」の中の6人(時には7人)が日本で小学校コンサートを主軸にしたツアーを始めてもう6年になりますが、ハードなスケジュールを縫っていつも「一般公演」という形で日本のファンに素晴らしい演奏(学校向けでなく彼ら自身のオリジナルレパートリーが中心、という意味でも。)を披露してくれています。今回も創作組曲「スリマナ」を含め自信に満ちたステージ、そしてさすがに日本の聴衆は「大曲慣れ」しているのかどうか分かりませんが、聴く方のマナーとしても日本は1流だなと会場の雰囲気から感じました。

演奏後の打ち上げは地元のフォルクローレ愛好家の方々が主催して下さり、40人以上の老若男女ごちゃまぜで「ビバ・ミ・パトリア・ボリビア(祖国ボリビア万歳)」の演奏でメンバーらを会場に迎え入れ、その後は疲れ知らずのアカパナによる演奏が延々と続いた賑やかなものでした。また、ビュッフェ形式の食事中、ロランドさんがスパゲッティーやピザなんかを小皿に取り分けて僕らに「どうぞどうぞ」と振舞ってくれたのには、彼をよく識る者としていつもながら感激しました。きっと彼に初めて接する日本のファンの方々も、そのちっとも気取らない純朴で優しい人柄に感銘を受けたことと思います。僕がボリビアのムシカ・デ・マエストロスで度々演奏するようになって4年の歳月が過ぎましたが、ロランドさんのサービス精神というか気配りにはいつも頭の下がる思いで、演奏旅行なんかに行けばまるで修学旅行の引率の先生のようで微笑ましいというか。そう、ボリビアのミュージシャンは(もちろん僕も含め)旅行ともなるとバスでもホテルでもまるで子どものようにはしゃぎまくるので大変なのです・・・。

演奏活動などを行っていて時に感じることがあります。ステージの大小にかかわらずいつも温かい、時には熱狂的な拍手をいただき、打ち上げなんかでも僕の大好きなお酒で心から歓迎してもらえる・・・、演奏者冥利につきることなのですが、そんな中で自分の本質や原点を見失ってはいけないのだと。ましてや「プロアーティスト」特有のおごりなど言語道断。そもそも厳密には「音楽」の下にはプロもアマも有名無名も存在せず、言ってみれば芸術を真摯に求め続ける心、スピリッツがあるかどうかが最も大切なのではないでしょうか。ロランドさんの音楽や人となりに日頃から接していると心から温かい、幸せな気持ちにさせられると同時に、自らを振り返っては音楽面でも人間面でも未熟さを痛感せざるをえないのです。それほどまでに、11年にわたる彼との親交には感謝でいっぱいです。