6月5日 (日)  ハイメ・トーレスとの再会

相変わらず政情の悪化する一方のボリビアを後にして、今月2日から4日間だけアルゼンチンのブエノスアイレスに行って来ました。実は僕が初めて「外国」の地を踏んだのはこのアルゼンチンで、今から17年少し前のことでした。当時はオーバーなくらい抑揚のきいたアルゼンチンの、しかも強烈なスピードのスペイン語に慣れるのが必死だったのを思い出します。今回は出来たての新作アルバム音源を師匠であり無二の友人であるハイメ・トーレス氏(ブエノスアイレス在住)に聞いてもらうことが主要な目的でした。しかも滞在中はハイメ氏とご家族の厚意で自宅に泊めてもらい、自分の新作についてあれこれ貴重なアドヴァイスをたっぷりいただくことが出来ました。ここでその内容を詳しく述べることは不可能ですが、一番感動したのは、ハイメ氏が「私はあなたの心からの友人であるから、表面的な美辞麗句を述べるつもりはない」との前置きの上で、僕の新作の中の「共感しうる点」と「そうではない点」を一言一言丁寧に説明してくれたことです。しかも「私はあなたに何かを注文つけたりする資格などは何もない」と言われた時には、20年近くにわたる自分の師だけでなく、アルゼンチン音楽界の重鎮であるのにいつもきさくなこの巨匠の人柄の深さを改めて思い知った気がしました。音楽のみでなく人柄で心を震わせることのできる稀有な芸術家、考えてみれば世界的巨匠というのはどんなジャンルの人でもそういう共通点を持っているのかも知れません。

ところで、今回初めて思ったのは、ハイメ氏のようなマエストロと言えども別の人間であるからには、そろそろその大きな影から芸術的にも「脱皮」しなければならぬ時期が来ているのでは、ということ。もちろん偉大なる師の良き部分は受け継ぎながらも自分の道をより明確に歩まねばならない、そういうことだと前向きに解釈しています。今度出る新作CD「チャランゴ巡礼」がその一歩になるかどうか・・・、と自問する毎日なのです。

↓1986年の初来日時(京都)  ↓2002年、ビリャ・セラーノ村(ボリビア)にて

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