7月1日 (金)  パコ・デ・ルシアの新譜を聴いて

パコ・デ・ルシアの新譜(と言っても昨年発売だが)「コシータス・ブエナス」を聴きました。ここまでの境地に至ると、内容についてあれこれ述べるのもしらじらしく思えるほどの高みに達している作品です。ご存知でない方のために、パコは1947年スペイン・アンダルシア地方生まれのフラメンコ・ギタリストで、デビュー(14歳)から半世紀近くにわたる大活躍によってジャンル問わず世界中のギターフリークに神のように慕われている超天才ギタリストです(詳細は関連サイトを)。僕がその驚異的な演奏を生で初めて聴いたのは中学2年の時だから、もう25年も前の話!あの時ほど度肝を抜かれたと同時にギターはもう止めようと痛感したことはなかったと記憶しています。翌日ギター教室の先生に「あれはキチガイだから気にしなくていい」と慰められたことも(笑)。

で、今回の作品について。1976年の名盤中の名盤と評価されているアルバム「アルモライマ(←最初にパコを聴く方にはこちらをオススメします)」を経てパコは他ジャンル(主にジャズ、フュージョン、ロック)の名人との共演に積極的になり、それが彼の音楽を一層斬新なものにさせます。その後20数年間に出たアルバムの多くはなんらかの「迷い」や時には「悲愴感(=その最たるものが98年の前作「ルシア」)」を感じさせるものだったのですが、この「コシータス・ブエナス(素敵なもの)」では今までになくリラックスしてフラメンコを楽しんでいるように思えます。アルバムの曲の多くがギター、カンテ&パルマ(唄&手拍子)、パーカスによる素朴な編成で、奇をてらったようなアイデアは前面に出てこない。もちろん複雑なハーモニーや絶妙の即興は相変わらずだけど、キューバン・フュージョン色の強いラストの1曲を除いては完全にフラメンコの故郷であるアンダルシアのトーンが勝っていて、聴いているこちらもつい赤ワインやシェリー酒を傾けたくなる、そんな気分にさせられる楽しいスリリングなアルバムに感じます。関係ないけれど、僕のチャランゴのアルバムを聴いてシンガニ(ボリビアの蒸留酒)を飲みたいな、と思ってもらえる日が来るならなんて幸せなんだろう、とふと思いました・・・。

↓COSITAS BUENAS (2004) ↓ALMORAIMA (1976)

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