3月27日 (月)  コンセルティーナとの出会い

つい1週間前からなんですが、ずーと前からの念願であったコンセルティーナ(Concertina)という楽器をいじり始めています。コンセルティーナは日本では英語名コンサーティーナとして知られており、イギリス、フランス、ドイツで1820年代に同時発生的に広まったボタン式アコーディオンの一種(下の写真参照)。大きさはとても小さく、タンゴで使うバンドネオンの3分の1くらい、両手に収まる感じの可愛らしい楽器です。この機会にいろいろ調べたのですが、なんと現在の鍵盤式アコーディオン(20世紀初頭発明)やボタン式バンドネオン(1835年頃発明)よりもさらに古い、いわゆる蛇腹を閉開しながら弾くリード楽器の元祖らしいです。

僕がこの楽器を見たのは今から12年前、ここラパスでムシカ・デ・マエストロスのコンサートを初めて聞いた時でした。その際にはただの小型バンドネオンという印象しかなかったのですが、その後同グループに入ることになってボリビア有数のコンセルティーナ奏者ワルド・トゥルヒーリョ氏と親しくさせていただく中で、古いボリビア音楽にぴったりの郷愁を誘う甘い音色の虜になりました。でも現在はイタリアとドイツあたりで細々と生産されているのみで楽器の入手が困難だったことから、実際に習うのは長い間あきらめざるをえない状態だったのです。

そんな中でとうとう今回ラパスで見つけたのは1880年前後のイギリス製で、イングリッシュ・コンセルティーナの発明者チャールズ・ホィートストンの助手レイチェナル女史の工房で作られた1台。なんせ骨董品同然だったので、調律はじめその他の「復旧作業」をしてもらった末に迷わず手にとって始めたのです。で、実際に弾き始めるといろいろな技術面にぶつかり難航してはいるのですが、けっこう楽しんでもいます。小さいので寝る前にベッドで寝転がって練習するのも気持ちいいし(日本のプロ奏者に言ったら怒られると思いますが)。

それにしても、この楽器、19世紀にヨーロッパの船乗りが娯楽用に持ち運んでいたものが南米にも持ち込まれたのですが、南米諸国で国民音楽(日本でいうフォルクローレ)の楽器として根付いたのはここボリビアだけらしいのです。他の国の民俗音楽ではむしろその後に広まったアコーディオン(アルゼンチン、チリ、コロンビアなど)やバンドネオン(ただしアルゼンチンとウルグアイのみ)のみが現在まで残っているようです。なぜボリビアだけでこの楽器が広まったのか不明ですが、でもボリビアでもその最盛期はせいぜい20世紀初頭から中頃までで、今では弾く人は全国で10指に上らないと言われています。つまりは「新大陸」では明らかに存続の大危機にあるコンセルティーナ、今から演奏家になれるとは思っていないものの、何らかの形で日本でもその魅力を伝えられたら、とずうずうしく思っているここ数日です。

(ボリビア・ラパスにて。)

(右は分解写真、放射線状にリードが配置されています。)

20060327-1.jpg 20060327-2.jpg