6月17日 (水)  カルカス公演の正直な感想

先週金曜(6/12)にうちからけっこう近い松戸の
カルカス公演に行ってきました。

会場の集客は70%といった状況で、
ラッキーなことに、数日前に予約したのに前から2列目中央!、
しかもマイミクの人たちと偶然一緒という、
まずは開演前のサプライズがありました。

で、感想がくどくなるとよくないので(笑)簡潔に書きますが、
まず、コンサート全体は感動しました。
ただ、その「感動」とは要するに、
僕ら学生時代がカルカス一色であった連中にとっては
とっても懐かしい思いにふけることができた、
そういう意味においてです。

18年ぶりのカルカスだけあって、
さすがに日本人にも人気のあるレパートリーを
いくつも演ってくれたし、
それだけで胸に来るものがありました。
それは確かです。

ただ、一応「音楽専門家」の末席を汚している自分としては、
純粋に音楽的に見て、
また、客観的にコンサートイベントとして見て、
かなり大きな欲求不満が残りました。

今回の来日公演にかんする他の方々の感想をいくつか見てみると、
「若返り」のプラス面(=かっこいい!etc.)を指摘する方が
けっこうおられますが(←まあ好みの問題なんでいいんですが)、
僕が感じたのは、
ただ単に安っぽい大衆路線に走って老舗名門グループの
「延命」をはかっている、
そういう風にしかとらえられませんでした。
同時にこれは「真面目な音楽」が商業的にはもはや成り立たない
というボリビア、いやそれだけでなく世界の音楽業界の実態を
反映しているものだとも思います。

演奏力および創作力が各段に低下している!!、
それはここ10年前からボリビアで何度か彼らの演奏を
聴いていて、悲しくも感じていたことでした。
これは日本では王者カルカスにたいする「タブー的」意見に
感じられるかと思いますが、
ボリビアの一般音楽界では以前から十分に指摘されていることです。

また、「若返り」というタームもいろんな意味にとれるもの。
たとえば80年代の「ベストメンバー」来日時では、
エルメール、ガストン、フェルナンドなどはまだ20代半ば、
エドゥインなんかは85年では19歳だったと記憶しています。
でもあのすでに「円熟」を感じさせる天性の音楽性、
これは当時彼らの年齢を聞いてびっくりするに
値するものであったと思います。

あと、(松戸公演だけの話ですが)
宍戸さんが最初のうちはガストンのMCを通訳していたのですが、
途中からまったくなし。
これではボリビア音楽を初めて聞くおじいさん・おばあちゃんの
会員ばかりの労音公演ではなんら意味がありませんでした。
日本ではスペイン語は今もなおマイナー言語であるという
現状を意識すべきだと思いました。

ただし、宍戸さんご自身はいいですよ!、
演奏も人柄も。
ボリビアで何度か会った時から感じていることです。

まあいろいろ書きましたが、
昔からのカルカスファンで、
しかも21年前にカルカス学校(コチャバンバ市、エルモーサ兄弟の
ご実家)に無料で短期居候させてもいただいた自分としては、
「2009年カルカス公演大礼賛」の流れに逆らってでも
やっぱり上記のような率直な感想を書かざるを得ない、
そういう責務を感じたまでです。

(後記)翌日、ベテランケーナ奏者YOSHIOさんの
ブログでも同様の辛口議論がなされていたのを知り、
深く共感した次第です。
もちろんカルカスを長年愛する人たちだからこそ
率直に書けることなんだと思いました。

http://yoshioquena.cocolog-nifty.com/yoshio/2009/06/090614-7700.html