9月1日 (火)  クスコの国際チャランゴフェスティバルに参加して

8月30日からボリビアにいます。
31日は、11年連続でラパスで誕生日を祝ってもらいました。
やっぱり長年住んだ街はやたら落ち着きます。

さて、8月25日〜29日まで開催されたクスコの
国際チャランゴフェスティバルは
言葉で言い表せないほどの素晴らしい盛り上がりと
たくさんの出会い、そして最終日の涙の別れ・・・、
ほんとうに来てよかったと感じたイベントでした。

まずはともかく、
ボリビア以外の近隣諸国でのチャランゴソロのレベルが
10年前とは比べものにならないくらい凄いものに
なっている、それが一番の感想でした。

残念なことですが、
ボリビアチャランゴ界はかなりやばいのでは!!??

というのも今回ボリビアからの参加チャランギスタはゼロ、
ボリビア人では往年の歌手のオルランド・ポーソと
チャランゴ製作者のハイメ・ガルシアのみ。

「ダイジ・フクダが日本代表とボリビア代表を兼ねている」、
なんて劇場では本気モードでアナウンスされていました。

演奏者としての参加は、
ペルー、アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、そして僕のみ。
で、その演奏内容はボリビアチャランゴ協会主催の
国際フェスティバルをはるかに凌ぐ高レベルのものでした。

開催国のペルーからはベテランから若手まで色んな世代の
演奏者が出ましたが、
それぞれ地方固有のスタイルを尊重した味わい深い演奏、
加えて今回のイベントの注目株であった
新しい世代のマエストロ、フェデリコ・タラソナによる
現代音楽とペルー音楽を合わせたまったく新しい
洗練されたチャランゴ音楽、
これにもかなりショックを受けました。

すぐにジャズやロックとの安易なフュージョンを試みる
エレアコチャランゴ全盛のボリビア音楽界とは
大違いで、
真摯に異なるジャンルの音楽を極めた結果が
真の意味でまったく新しいチャランゴ音楽を
生んだんだと思いました。

またコロンビア勢は、自分達の国では20年前に
チャランゴがコロンビア音楽に導入されたと
明言した上で、
コロンビアのパシージョやバンブーコの名作曲家たちの
レパートリーを、チャランゴの魅力を失うことなく
見事に消化(昇華)していました。
まったく感動ものでした。

アルゼンチンの人たちは、
御大ハイメ・トーレスの影はあまりみられず、
それよりももっと現代的なスタイル
(特に大型のバリトンチャランゴの無伴奏ソロ)が
流行っているようで、
音楽的にもやはり極めて高次元なものを目指していました。

・・・、で肝心の僕は3日目の27日に演奏しました。
なんせギタリストを現地で探すということだったので
レパートリーも含めかなり戸惑いましたが、
すぐにアルゼンチン人のベテラン達の協力を
得ることができ、
ボリビアとアルゼンチンの曲、そしてオリジナルで
なんとか切り抜けました、ホッ。

結局演奏した曲は、
1.牛追い(マウロ・ヌニェス、ボリビア)
2.チェ・ゲバラに捧げるカルーヨ(福田大治)
3.夢想飛行(福田大治)
4.時のチャカレーラ(ケロ・パラシオス、アルゼンチン)
5.チンバ・チーカ(ハイメ・トーレス、アルゼンチン)。

最初の2曲は無伴奏、
3と4ではアルゼンチンのギターのマエストロ、
シルビオ・フラーガ氏による伴奏、
5は、やはりアルゼンチン往年のギタリストの
オルランド・モーロ氏、
そしてなんとわが師ハイメ・トーレスの息子で
チャランギスタのファン・クルス・トーレス氏との
弦トリオという少人数だけど豪華な編成、
とっても気持ちよく演奏できました。

旅行かばんいっぱいにつめて持っていった自分のCDも
終演後15分で完売!、
まったく予期せぬことでした。

クスコのお客さんは僕のギャグにも丁寧に(笑)
応えてくれたし、
それに何よりもMCの中で僕は、
近年チャランゴの起源をめぐってペルーとボリビアの間で
不毛な論争が繰り広げられていることにふれ、
チャランゴは「弦楽器(instrumento de cuerda)で
あって政治の道具(instrumento de politica)ではない、
ラテンアメリカ、そして今や世界中の人々の統合・友好の
シンボルになるべきだ、ペルー人もボリビア人もその他の
国籍の人たちも意味のない論争はやめようではないか」
と、スペイン語のダジャレを交えて
一発演説もどきをかましました。

満員のテアトロの客席からは拍手と熱い歓声・・・、
国際舞台で演奏できたことも良い思い出になったけれど、
南米の人々と熱い思いを共有できたこと、
それが大きな精神的収穫になりました!

また、フェスティバルの最大の魅力、醍醐味は
演奏者全員と同じホテルで、食事も全て一緒に
過ごすため、まるでファミリーのような
あたたかい雰囲気に包まれることです。
これぞ無形の財産だと思います。
日本からの参加だと言葉の問題もあって
取り残されるのではと心配する人もいるかも
知れませんが、そんなことは全然なく、
ラテンの人たちは本当に人懐っこくて
あたたかいでよ。

なお、フェティバルの様子はすべて(全奏者・全曲とも)
youtubeに近々アップされますので、お楽しみに!