9月13日 (日)  ラパスでのカブールさんとのリハ

この分野の関係の方はご存じだと思いますが、
今週土曜(19日)に都内で開催される
第1回全日本チャランゴコンクールの招聘で
来日するマエストロ・エルネスト・カブール氏と
来週22日(芦屋)、23日(東京)で一緒にコンサートを
することになっています。

ということで8月末にラパス(ボリビア)入りしてから
先週末まで2週間びっしりカブールさんとリハでした。

僕はすべての曲がギター担当なのですが、
今までに光栄にも伴奏させていただいたチャランゴの巨匠の方々
(ハイメ・トーレス、センテーリャス、アルフレド・コカ、
ドナート・エスピノーサの諸氏など)とは大きく違い、
カブールさんは人一倍要求の強い(かつきめ細かい)人でした。

別のいい方では、他の名手の人たちはギターは個々の感性に
任せるといったスタイルだったのです(それはそれで
難しいことなのですが・・・・)。

音合わせ中のカブールさんは、
ステージでのほがらかで茶目っ気ある、
いわば「明るいエンターティナー」のイメージとは
まったく違う人でした。

ちなみに初日は「ダメだし」の連続。
師匠いわく、
「何年こっちの音楽やってるんだ!?」・・・。

かと言って、そんなことでくじける自分でもありません
(と信じたい)。

楽譜を使うなど野暮なことはしない師匠なので、
その上、その時のインスピレーションで
曲の部分部分、時には構成そのものがかわる方なので、
こちらも神経を研ぎ澄ませねば到底伴奏など
つとまらないことに気付きました。

その上コカ葉をかみかみ話されるので、
注意事項を聴きとるのもけっこう大変だったのです(笑)。

また、カブールさんの音楽は、
決して出身地「ラパス」のスタイルを代表するものでなく、
カブールさん自身の個性や哲学までもが強く濃くでたものです。

とにかくは「己を忘れて師にとことん合わせよう!!」、
そうやった結果、
3日目には初めてお誉めの言葉をもらいました。
ただし、細かいリズムが未だ不十分だという注釈つきで。
でもマエストロの表情に笑顔が満ちているのを見ると、
それだけで心から嬉しく思ったものです。

で、なんですが、
その翌日くらいからラパスの石畳の通りを歩くと、
いつもの風景がまるで違ったように生き生きしているように
見えたのです。

これには本当にびっくりしました。
一種の魔法のようでした。

カブールさんの音楽はラパス州の民俗音楽を忠実に
継承したものではないはずなのですが、
この街の、あるいはボリビアという国の雰囲気に
ばっちりあてはまるのです、
そういう感覚でした。

それは、
人々(特にラパスの大部分を占める庶民階層の人たち)の表情、
黒々としたガスいっぱいに走る路線バス、
コカ葉売りのおばちゃんたち、
大学を出ただけで調子いいことばかりいって
結局正直ものをごまかす兄ちゃん連中、
自分たちの恥も知らずにその瞬間だけを謳歌する権力者たち、
ずるがしこい為政者たちに抵抗することすら知らず
あくまでもマイペースにその日その日を送る
カンペシーノス(農民たち)・・・・、

と、な〜んかこういう書き方するとわざとらしいけれども、
本当にカブールさんの音楽はこうした「庶民観」、
そう、一部のヌエバカンシオン(中南米の社会派音楽)が
謳うエリート革命家的ソングでもなく、
また、田舎出自のアウトクトナ音楽でもなく、
あくまでもカブールさん自身が育ったラパス庶民地区から
来た自然な感覚の音楽なんだなと解釈しています。

自分は、カブールさんと何十年も家族づきあいをされている
ギタリスト木下尊惇さんの「カブール観」には到底及ばないし、
もしくは自分自身の解釈もありうるのかも知れませんが、
今回の来日ライブでひとつの答えを、
あるいは無理であればその糸口だけでも見つけられればいいかと
思っています。

とりあえずはマイミクのみなさま、
よろしく応援お願いします!
「カブール道場」での成果はいかに!?