9月20日 (日)  カブールさん公演日記(1;リハ編)

ボリビア・チャランゴ界の巨匠中の巨匠・
エルネスト・カブールさんの2回のみ(関西9/22&東京9/23)の
来日公演にギター奏者として光栄にもご一緒しました。
そして先日全日程を終えて
今は余韻にひたっているところです。
嵐のように去って行ったカブールさんと奥様のネグラさんのことが、
懐かしくて仕方がない、そんな気分です。

言葉では言い尽くせないほど、
カブールさんはたくさんの「心の財産」を残していって
下さいました。
10数年にもおよぶ長いつきあいであったとはいえ、
今回はマエストロの人となりにずっと深く触れることができ、
それは本当に幸せな体験でした。

音楽そのものや、ボリビアの音楽界の問題にたいする
さまざまな見識についてたえず貴重な意見が聞けたのは
いうまでもないですが、
その他にも、やはり超大物にふさわしい
「きわめて奇特な言動(笑)」にも大いに驚き、
そして笑わせていただき、
今でも周囲にいた人たちとともに思い出し笑いを
しております(もちろんご本人のプライバシーもありますので
すべてをお伝えすることはできないのですが・・・)。

カブールさんはステージ上では冗談好きのエンターティナーで、
笑顔もこの上なく素敵な人なのですが、
普段も同じく冗談で周囲を笑わせるのは事実としても、
根はかなり繊細で、また気難しい面を持っています。
ただそれは決して悪い意味での気難しさではなく、
いってみれば「下町の哲学者」のような雰囲気なのです。

半世紀にわたって現代ボリビア音楽界を背負ってきた
マエストロは単に楽器について詳しいのみでなく、
音楽界そして世の中全体が抱えるさまざまな問題を
つねに熟考し、自分なりの答えでもって実際に
行動を起こします。
その知識は驚くべきもので、また話題が常にマイペースで
「展開(あるいは転回)」するので
時折フォローに苦労するほどです。

さてさて、そんなカブールさんとまずは20日(日)の
午後に両国の知人宅スペースをお借りして、
今回のもうひとりの共演者である
サンポーニャ&ケーナの名手・岡田浩安さんと
3人でリハ。
僕はカブールさんと十分にボリビアで合わせてきたので
ほぼ不安はなかったのですが、
岡田氏とはその時が初めて。

しかし、さすがというべきかあっという間に曲が
出来てきました。
カブールさんも満足そうな様子。

ところがその後に知人がすすめてくれた「甘口国産ワイン」が
けっこうまわったのです。
カブールさんは体調維持のため厳格な食事制限を
とっており、お酒はほとんど飲まないので
(←かつてはものすごい酒豪だったんですが。)
実質僕一人がふらふらになってしまいました・・・。

カブールさんとネグラさんご夫妻はその日の夜から
2泊ほど僕の柏市の自宅に泊まることになっていたので、
練習後は夜8時頃にすぐに電車で移動。
家に着いてからはあまり記憶はないのですが、
カブールさんたちもお疲れの様子だったので
すぐにお休みになったようです・・・。