9月22日 (火)  カブールさん公演日記(3;関西公演)

9月22日(火)はいよいよ関西公演!
午前中の東京発の新幹線に乗り、
途中新大阪で在来線に乗り換えて
昼過ぎには会場の「集・空・間TIO」(兵庫県芦屋市)に
無事到着。

こちらでは主催の近藤眞人さんが迎えてくれました。
ギタリストでもある近藤さんは僕の出身地でもある関西の
フォルクローレ界の先輩格の方で、
チャランゴなど弦楽器の修理工房もやっておられます。

この近藤さんの他にも会場では、
音響の浜さん(サウンドCIELO)やケーナ奏者の
井上暁さんなど僕の関西での心強い旧友の方々が
みなさんボランティアでお手伝いに来て下さっていて
心から感謝・・・・。

翌日の東京もあわせたった2回限りの来日一般公演ということで、
準備にも緊張感がみなぎります。
この音楽に精通しているベテラン浜さんのおかげで
難なくサウンドチェックは終了、
素晴らしい音響です!

で、予定通り午後3時過ぎには開演となりました。

会場いっぱいにつめかけて下さった
(主に)関西のファンの方々、
カブールさんの演奏を間近で聴こうとこの日を
どれだけ心待ちにしておられたことでしょう。

実はそれは演奏者の僕もまったく同じ気持ちでした。

関西は僕の出身地であるだけでなく、
学生時代にこの音楽の演奏を公式に始めた想い出の地。
また10代の少年時代にカブールさんの来日公演に足を運び、
チャランゴとカブールさんの魅力に打たれ涙した
地でもあります。
同時にボリビア音楽についていろいろ教えて
下さったたくさんの先輩演奏者の方がいます。
上記の近藤さんや井上さんもそうです。

そんな場所で巨匠カブールさんと演奏する・・・、
これは僕にとっては特別な意味をもつことでした。
否が応でも気が引き締まります!

今回の2公演は2部構成で、
前半はほとんどがカブールさんの無伴奏ソロで
僕は通訳を担当します。
ただステージ慣れしていると思っていた自分としては
異常に緊張したせいか、
数ある自分の職業のひとつでもあるスペイン語通訳にも
時として淀みが生じたりしました。
そういう僕を見越したのかどうかわからないけれど、
カブールさんは、なにかしらちょっかいをかけてきます。

たとえば、
演奏中のカブールさんのマイクが下がってきたので
気を使ってそっと途中で上げて直すと、
すかさずマエストロはそのマイクをまた下げる・・・、
会場はもちろん笑いにつつまれます!

そんなお陰で前半の後半にはすっかりリラックス
してきました。とっても気分がいいです!

そして盟友岡田氏の紹介時にカブールさんはなぜか
「それでは若干17歳のサンポーニャ奏者を紹介しま〜す」。

実際には40歳に近いベテラン奏者の岡田さんは、
この分野におけるその知名度は全国区、
なので会場はまたまた笑いの渦。
みかけが若く見えるのでカブールさんは勝手に
「17歳」と名付けたらしいですが。

しかしながら御大の「おちょくり」はそれに
とどまりませんでした。
ある曲で、これは岡田氏はまったく演奏しなくて
いい曲のはずなのですが、
カブールさんは「彼は今までに弾いたことのない楽器で
次の曲を伴奏します。それはハート(心)です」。

で、曲が始まります。
半ばわけわからない状態の岡田氏はしばらくは
僕らの演奏を見守っていますが、
手拍子の部分になると一緒に手を動かし・・・、
その瞬間、マエストロは「演奏ストップ!!」。
いわく「ハートだけで伴奏してねって言ったでしょ!」
またまた会場は爆笑・・・・。
で、曲の最初からまたやりなおし!

休憩はさんで後半戦は主に僕のギターとカブールさんのドゥオ、
終盤には岡田浩安氏のサンポーニャ&ケーナも入ります。

ドゥオの曲はラパスでも手堅くリハを重ねたので出来はまずまず、
管楽器の入る曲はカブールさんの70年代の懐かしの名曲、
初来日の80年代前半以来日本で演奏することはなかったので、
往年のファンの方々にも喜んでいただけたかと。
岡田さんのド迫力のサンポーニャにもお客さんは
びっくり&感動していました。

最後の方の曲ではお客さんも次々に舞台に上がり(上がらされ)、
振り付けをマスター、
会場が一体になって盛り上がった、
そしてカブールさんのユーモアとまったく飾らない人柄に
みなさん酔いしれた、稀有なコンサートになりました。

終演後はサイン会と食事会、
井上さん製作の陶器製ケーナと井上さんと近藤さん合作の
なんと共鳴胴が陶器のチャランゴがカブールさんに
贈呈され、ラパスのカブールさんの楽器博物館に
めでたく展示されることになりました。

また、車いすで南米を旅し10年前にカブールさんと知り合った
私の友人でもある作家&書家の乾千恵さん(大阪在住)とも
感動の再会、
千恵さんは来年ラパスに10年ぶりに行かれるそうで
またの再会を固く約束していました。

そんなわけで素晴らしすぎた関西公演、
でも翌日の東京を控えているので感動を胸にしつつ
新大阪のホテルに夜10時にはチェックイン・・・。