9月11日 (土)  南米コンサートツアー報告記(ボリビア・コチャバンバA)

9月11日(土)、
ボリビアでの最終公演は、前夜と同じコチャバンバ市。
この晩は、今までのコンサートとは趣が違って、
日本の無償協力で完成したコチャバンバ市内の
マンセスペ音楽院の移転新築記念式に招待されての
記念コンサートでした。

マンセスペ音楽院は校長先生が藤井さんという大阪出身の方。
80年代に青年海外協力隊でクラシックの音楽教師として
ボリビアに来られて任期終了後もこの国に残り、
そしてコチャバンバでゼロから音楽学校作りを始めたという、
まあとてつもないバイタリティの持ち主です。

そしてこの音楽院新築プロジェクト、
建物だけでなく新品の楽器類もすべてそろっており、
なんでも世界最大級の日本による「文化無償」の
モデルケースになったらしいです。

そんなわけで、夕刻から始まった屋外での記念式典には
エボ・モラレス大統領、エドゥイン・カステリャーノス・
コチャバンバ市長など国内の要人と主要テレビ局・マスコミが
勢ぞろい。

大統領や藤井先生の演説の後は、
屋外の記念レセプションでやたら甘〜いシャンパンを一同いただき、
ここでエドゥインさんにも再会できました!
日本でもボリビア音楽ファンならみんなご存じのとおり、
彼は元カルカスのメンバーで何度も来日している
すごいミュージシャンです。
カルカスを96年に脱退してからトゥパイというユニットで
長く活躍していましたが、
さすがに市長職にあっては音楽活動も休止している様子。

その後生徒さんたちによるオーケストラ(クラシック音楽)の
演奏などがあり、
僕たちがステージに上ったのは夜の8時半くらいだったと思います。
それでも(昼は暑いコチャバンバも夜は冷えるのに)
400人くらいのお客さんが満点の夜空の下の客席で
待っていて下さったのがなんとも有難かったです。

ラパスからずっと続いたボリビア公演、
この夜はリラックスした感じでプログラムも進み、
後半はチャランゴの巨匠アルフレド・コカさんとのセッションで
コンサートは無事終わるはずだったところ・・・、

ここですごいサープライズ!!!

なんとなんと、ステージ後方からボリビア楽器の合奏のような
音色が聞こえてきたかと思うと、
それはこの学校の「フォルクローレオーケストラ」のこどもたち
だったのです!!
団員は全部で40人はいたでしょうか、
彼らは演奏しながら僕らの後ろ側に順番にならび、
そして1曲終えた後には客席からもすごい拍手!!

藤井校長先生がすかさず舞台わきに上ってこられ、
マイクでお客さんに向って(もちろんスペイン語で)、
「昨日ダイジさんと話したところ、
明日夜にはもうこの街を去ってアルゼンチン公演に行かれるとのこと、
実はこどもたちのフォルクローレオーケストラは明日の晩に
コンサートがあるのに聴いてもらえないのは残念極まるので、
今夜は内緒でこういう運びにさせてもらいました」。

演奏者一同、ほんとにジーンときてしまいました!!

その後はこどもたちが演奏する数曲に
ステージに残ったままの僕ら演奏者が即興で合わせる形、
そしてこどもたちの演奏する時の表情がなんとも言えなかったです!
なんか「音楽する人の原点」ってものを彼らから改めて
教わった気持ちになりました・・・。

僕らにとってもこのような素晴らしすぎる形で
ボリビア最終公演を終えられるとは、
まったくみなさんに感謝の言葉もありませんでした。

そして終演後に楽屋に来てくれたこどもたちのチャランゴに
サインしてあげたり、一緒に写真とったり・・・・。

その時僕はふと、30年近く前の関西のワル高校生の頃、
来日したエルネスト・カブールのライブに行って、
終演後に恥ずかしげに片言のスペイン語で
「サインいただけますか?」とお願いして、
自分が初めて買ったばかりのチャランゴの表面に
マジックで書いてもらったのをほんのり思い出しました。

もちろん僕はボリビアの巨匠たちのような大物では決してないけれど、
こどもたちの喜ぶ顔を見るとなんかすごく胸の奥まで
熱くなってしまったのです・・・。

その後演奏者と友人関係者一同は、
夜遅くまでやっているコチャバンバ料理の専門店「カサ・デ・カンポ」に
タクシー分乗で直行!!
ボリビア公演全体の「打ち上げ」とあってか、
その時に飲んだシンガニ(ボリビアの蒸留酒)の
やたらうまかったこと!!

ギターのファン・カルロスさんやサンポーニャのアレハンドロ君とも
その晩でお別れ、音楽家としても超一流だけども、
一人間としても一生つきあいたい、
本当にいい仲間です!!

そう言えば、
そのふたりが前夜の打ち上げでそっと僕に言ってくれたこと。
「今夜のコンサートのMCで君は、ボリビアの音楽のことを
ごく自然に”われわれの音楽(ヌエストラ・ムシカ)”って
表現してた、確か3回ほどかな。
僕らはそれを聞いてうなずけたし、とても嬉しい気持ちになったんだ、
君にはそのような表現をする資格があるんだから」。

ボリビアの人々は音楽ふくめ自国の文化に対するプライドが
いい意味においてとても高いので、
ひょっとしたらそういう表現を現地の人たちに対して使うのは
どうなのかなと思っていたけれど、
その時にふたりにそう言われて、安心というよりも
心底嬉しかった。

・・・・ここでボリビア編は終わりで次回からは
アルゼンチン公演の様子をお伝えします。


★ボリビア公演記の最後に、
「在外公館文化事業」として一連のボリビア公演を主催して下さった
在ボリビア日本大使館(ラパス市)の田中大使はじめ
文化担当書記官、現地スタッフの方々、共催のラパス市役所、
在ラパス日本人会、コチャバンバ市役所、
コンサート期間中なにかとお世話になった友人知人の方々、
そしてもちろんのこと、
日本とボリビア両国のすべての皆様に厚く御礼申し上げます。