9月14日 (火)  南米コンサートツアー報告記(アルゼンチン・パタゴニア地方@)

ツアー記後半のアルゼンチン編を始めます。

ボリビア公演も嬉しい盛況に終えた後は
ボリビアでの共演者ともお別れ、
僕とバンドネオンの小川紀美代さんは
急ぎ足で次の公演場所であるアルゼンチンへと
飛びました。

アルゼンチンでの一連の公演は、
小川さんの以前からの知り合いで
南部パタゴニア地方トレレウ市在住の
若干25歳の天才ピアニスト・歌手・ギター奏者である
グスターボ・ジョーンズ君とのトリオ編成で行うというもの。
チャランゴが入る曲は数曲だけで、
ほとんどは僕はギターを弾くことになります。

レパートリーもボリビア曲や自分の曲が中心であった
ボリビア公演とはがらりと変わり、
アルゼンチンタンゴとフォルクローレ(←アルゼンチンでは
「フォルクローレ」という用語が一般的なのでここでは
使います)によるステージです。

グスターボ君とは今回が初対面、
しかもボリビアからアルゼンチンのトレレウ空港に着いたのが
最初の公演の前夜の9月13日(月)というぎりぎりの
スケジュール、当然ながら不安がよぎります。

とりあえずはとっても(!!)あたたかい、
ホスピタリティあふれるグスターボファミリーの
お迎えをいただき、ホテル一階の深夜までやってる
レストランでアルゼンチンワインで乾杯!!
コンサートの心配はおいといて、
僕はもういい感じです(笑)。

それに久々に話したり聞いたりする「アルゼンチン弁の
スペイン語」はとても懐かしく、
そして僕を自然にハイテンションにさせるものでした。
実は自分にとっての初めての「外国」は
チャランゴの巨匠ハイメ・トーレスを頼って大学時代に
訪れたアルゼンチン、
いわば自分のラテン人生の最初の舞台だったのです。

一晩明けた後の9月14日(火)、
昼間はグスターボ君、小川さん、
僕とで、ちょっと心配していたコンサートの合わせ。
ところが、これが意外にスムースに進み、
あっという間に15曲のレパートリーは編曲構成も含めて
仕上がって行きました。

グスターボ君の歌とピアノは予想通り素晴らしいもので、
実は彼は生まれつき盲目なのですが、
その純朴でやさしい人柄があらわれるような音楽を奏で、
歌います。早くも感動してきました。

小川さんも音楽的にはお膝元のアルゼンチンなので
ますます快調!

夕刻に、滞在先のトレレウ市から車で45分の、
パタゴニア・チュブト州の州都ラウソン市に移動、
そこのホセ・エルナンデス市立文化会館で
アルゼンチン最初の公演がありました。

開演は夜8時過ぎくらい、どういう宣伝方法か分からなかったのですが、
地元ではかなり知られているグスターボ君はともかく、
無名の自分たち日本人のコンサートにかかわらず
会場はあっという間に満席、400人くらいでしょうか。

「大使館主催」のボリビア公演よりはもうちょっと気軽な雰囲気を
予想していた僕にも一気に、でもありがたい緊張感が走りました!

最初の曲、タンゴの「エル・チョクロ」の後、
グスターボ君があいさつMCをしたところ、
途中で言葉がつまってしまいました。
どうしたのかなと思いちらっと見ると彼、涙を流していたのです!

「こんな素晴らしい日本人音楽家たちと舞台を一緒にできるなんて、
州政府はじめ皆様に感謝しています・・・」と。
僕も小川さんも、もらい泣きしそうになりました。

そして実は、僕らのパタゴニア公演は主催者の
グスターボファミリーのお取り計らいで、
なんとチュブト州政府とラウソン市役所が、
首都ブエノスアイレス−パタゴニア間の航空費と
パタゴニアでの滞在費ほかコンサート開催諸経費を
すべて負担して下さっていたのです!
これには感謝の言葉もありませんでした・・・。

またコンサート中間には、
僕らに対する「ラウソン市名誉賓客証書」の授与式があり、
市長さんから直接手渡されるという、
なんともびっくりするようなシーンが用意されてもいたのです。

なおアルゼンチン公演は、
小川さんがつい最近日本でリリースされた「エンクエントロ
(出会い)」という、ギタリストの智詠氏とグスターボ君の
トリオのアルバム(僕も2曲ゲストで入っています)の
発表コンサートという意味合いもありました。
名人の智詠氏が来れなかったのは残念ですが、
その分自分がギターで頑張らねばならなかったのです。

年齢的には中高年が目立ったパタゴニアのお客さん、
実は若い人たちに負けないくらいとっても熱狂的で、
最後の曲の後はスタンディングオベーションになりました!
感動でした。

幸いこの夜の舞台は地元のビデオプロダクションの方が
高品質のDVDにして下さったので、
近々YouTubeにアップされると思います。

終演後は主催者の方々と、
もう午前0時なのに予約していたシーフードレストランで
ワインと海鮮料理で打ち上げ!
アルゼンチンの人はボリビアよりも夜はかなり遅いようで、
お店もずいぶん遅くまでやっているんですね。

そしてホテルに帰ってからは、
心地よい疲労感の中で眠りにつきました。