月日のうつろひ 2005. 3
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3月20日 (日)  久々のボリビア!

先週、5ヶ月以上も留守にしたボリビア・ラパスに戻ってきました。万年雪をいだいた霊峰イリマニ山の頂上を通過したブラジル航空機は世界最高所(4080m)の国際空港に着陸し、懐かしいラパスの街中へとタクシーで降りていくと気分は高揚してきました。そして下宿先ではすぐに友人らと再会し酒宴!高山病を経験したことのない自分でも、さすがに今回は久々ということもあり少し頭が思い感じがしましたが、それ以上に沢山の人達との再会を楽しんでいます。ラパスの人口は100万を超えていますが、坂の多いすり鉢状の街なのでたいていの人はすり鉢の奥底にある目抜き通りに集まってきます。だから毎日何人もの友人知人と歩道で出くわし「オラー!、コモ・アス・エスタード!(ほんと久しぶりー!)」と叫んで抱擁しあっています。今は毎日午後いっぱいをスタジオでの新作CDのミックス作業にあてていますが、その他の時間はゆとりがあるので街をブラついたり、本屋で政治関係の新しい出版物を見つけたりしています。政治といえば今ボリビアは激動に近い時期にあり、つい2週間前にもメサ大統領の辞任(未遂)騒ぎなどで国内は騒然としていたようですが、現在はコチャバンバ地方で道路封鎖が続いている他は比較的落ち着いています。こちらに滞在している間にどんなことが起こるか予想がつきませんが、ボリビアの人達が話し合いによる解決法(改良法?)の可能性を捨てずに根気よく前進していくのを見守るしかありません。今まで通り、音楽、政治経済、社会、歴史、と色々なことに思いをめぐらせるボリビアでの数ヶ月になりそうです。


3月10日 (木)  沖縄から戻って

7日〜8日と一泊の日程で沖縄に行ってきました。沖縄と言えば三線の音楽や独特の料理に魅せられて過去に何度か足を運んだことはありましたが、今回はボリビア大使であるホアキン・ダブドゥブさんの通訳兼チャランゴ奏者として県に公式招待される形だったので、今までにない貴重な経験をしました。稲嶺知事や仲宗根沖縄市長との会見や数々のマスコミ取材なども興味深かったのですが、なんと言っても今回の目玉は沖縄(コザ)市の高原小学校と室川小学校を訪問し、ボリビアという国を知ってもらうために全校児童の前で講演やスライド上映、そして(少しだけながら)チャランゴ演奏を行ったことです。ホアキン氏はそれぞれの小学校に着くや否や、ボリビアの国旗のミニチュアを手にした子どもたちの握手ぜめにあい、これらの小学校での熱烈な歓迎ぶりが伝わってきました。また、子どもたちもエイサー太鼓や空手などで日頃の成果を披露してくれました。

ボリビアは普通の日本人には縁遠い国であり続けていますが、1954年に沖縄県出身の移住者の方々によるオキナワ移住地がボリビア東部で発足したという経緯があるため、沖縄県民の多くは親戚の誰かがはるか昔にボリビアに渡った、という経験を持っておられます。とは言え、小学生の子どもたちにとってはやはり「遠〜い国」。にもかかわらず子どもたちは今回のイベントのために本やインターネットなどでボリビアの地理、文化などについて実にきめ細かく調べてくれていて、その成果が学校内に展示してありました。中には片言のスペイン語を覚えて大使に話しかける子どもまで!「2つの沖縄(オキナワ)が地球上に存在する」ということを初めて知った子どもがほとんどだったそうですが、これからもボリビアやオキナワ移住地にたいする興味を持ち続けてほしいものです。そして成長した彼ら彼女らの何人かと将来ボリビアで偶然顔を合わせることがあったなら、「あ、あの時のギター侍!」なんて言われるかも!?(フォトギャラリーにも写真あります。)

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3月6日 (日)  ビバ仙台!

週末の土日と東北は仙台に行ってきました。1月末に東京でもライブを行った仙台在住のケーナ奏者・高橋易宏さんの企画招待でしたが、当初は旧知の仲間らと一杯やろうという話が、当日になってみるとなんと20人もの地元のボリビア音楽ファンの方々が参加して下さることになり、呑み会も兼ねた夜の会場は熱気でムンムン!そこは「あべひげ」という小さな純レトロ和風のお店、マスターの見事な「ひげ」と気取らない雰囲気が魅力で、仙台では特に演劇関係の人達のたまり場になっていることで有名です。まずは高橋さんが数年前から指導している仙台のサンポーニャ(ボリビアのパンパイプ)楽団「アルティプラーノ仙台」の方々が歓迎演奏をして下さいました。ボリビアさながらの迫力ですでに僕も興奮気味。その後は僕もチャランゴやギターを持ち替え、時には高橋氏のケーナなども加わり怒涛のように会は進んで行き、気付いたら深夜3時にもなっていて本当にびっくり!今回は初対面、しかも女性の方がほとんどでしたが、みなさん本当に心からボリビア音楽を楽しんでいるようで、しかも数々のサンポーニャやケーナの名手の方々とも知り合えてとても良い刺激になりました。同時に高橋さんの、仙台で本物のボリビア音楽を普及させようという並々ならぬ熱意が十分に伝わってきた夜でした。


3月4日 (金)  音楽で出来ること

今夜は、日本ではとても有名な(←当たり前だが)某皇族ご夫妻の前で演奏する機会がありました。それも大規模なイベントの類でなく、全員でたった6人きりの小さな夕食会で。「皇族」とは言っても「ひと」レベルで会ってみるとなんでもない普通の人たちで、しかも日本のことのみならず世界中の文化や音楽にもとても興味をもっておられることが分かります。僕は天皇制というシステムがもたらす弊害やそれを政治利用する役人らには常に反感をいだいていますが、皇族の人たちにたいする無意味な人格批判にもまた疑問を感じます。まあそういう理屈は抜きにしても、今夜は会場がボリビア大使公邸で、しかも大使の「ボリビアの素晴らしい音楽を紹介したい」という熱意に共鳴したので思想信条を超えて演奏やおしゃべりが親しい雰囲気の中で出来ました。クエカ(ボリビアの舞踊リズム)の演奏中も、自然に楽しく手拍子を打ってくれたのには驚きました。

演奏者として活動を長く続けるほど、ありとあらゆる場で、またさまざまな世界の人たちの前で演奏するチャンスが広がってくるものですが、どんな場で、またどのような条件で演奏するにせよ、まずはチャランゴやボリビア文化の魅力を真摯な姿勢で伝えようとする気持ちを忘れてはいけないと思います。そしてまた、暴力を中心とした病理現象だらけの今の世の中で音楽の果たす役割は大きく、それだけに「音楽人」としての使命の重さなんかも感じざるを得ません。音楽で出来ること、それは無限だけに、これからも自分自身を見失うことなく活動の場を広げて行こうと思っています。


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