9月21日 (木) ホンモノの音楽とは
つい先ほどの出来事です(現在ボリビアは午後3時半)。ラパス市内でタクシーに乗ったらスキンヘッドの初老の運転手さんがラジオのボリビア音楽にあわせて異常に明るいくらい上機嫌に鼻歌で歌っていたのです。その曲がスクレ・ポトシ地方のバイレシートだったので(←けっこうマニアック)つい話しかけたら案の定ポトシ出身だそう。そしておじさんは5分間足らずながら車内でとうとうと語り続けました。いわく、「ただ楽器をかき鳴らすだけの音楽家は世間に山ほどいる、でも本当にその音楽に生命を与えることのできる("hacer vivir la musica")音楽家は滅多にいない。ギタレーロ(ギター弾き)とギタリスト、チャランゲーロ(チャランゴ弾き)とチャランギストの違いはそういうもんだよ、おんなじ曲を弾いても全然違うんだよ、若造よ」。
まったく同感だったので、実は日本生まれの自分もボリビア音楽をやっており、またちょうど今夜9時にCANAL7(国営テレビ)に生出演するところだったのでぜひ見て下さい、とちょっと宣伝したら「じゃあ9時からずっとテレビつけて見守ってるよ」。うーん、緊張するなー。
タクシーを降りる際、最後におじさんは言いました。「俺は深夜で人ごみだらけのダンスパーティーでどんなに酔っ払っていても、耳だけはホンモノのいい音楽だけを求めているんだ。俺の名前はファン、またどこかで会おうや」。
(ボリビア・ラパスにて)
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9月14日 (木) バレ・ウン・ポトシ表彰記念コンサートを終えて
今日、ラパスでも屈指の音響&照明設備をもつラパス日本人会館ホールにて、歌手ダビー・ポルティーリョ氏との共作曲「バレ・ウン・ポトシ(ポトシのごとく)」に対してポトシ県人会による表彰式が行われ、あわせてコンサートが開催されました。この曲は2002年末に発表された「天地逆転(ディスコグラフィ参照)」の7曲めなのですが、ポトシの鉱山にまつわる壮大な歴史が語られる歌詞(ダビー氏による)は同CDの中でもとりわけ社会的内容の深いものです。
コンサートは僕、ダビー氏のほかに、カルロス・ポンセ(サンポーニャ)、アレハンドロ・アラルコン(ケーナ&サンポーニャ)、ダニーロ・ロハス(ピアノ)、ファン・カルロス・コルデロ(ギター)といった錚々たるマエストロらに加え、ゲストに現在1年間のチャランゴ留学中である神戸出身の安達満里子さんも熱演、初の試みながら舞台脇の5メートルのスクリーン(プラス3台のカメラ!)の効果も手伝って、200人で超満員のお客さんとともに盛り上がりました。1ヶ月という短い滞在期間中にこのような機会を与えてもらって感激でした。同時に、自分は「ボリビアの」音楽家でもあり続けなければいけない、という心地よい責任感を改めて感じた夜となりました。
(ボリビア・ラパスにて。)
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9月7日 (木) 2人のマエストロ
先週末から3日間ほどスクレに行って来ました。難病のため数年間自宅で療養中のチャランゴの巨匠ウィリアム・センテーリャス氏の見舞いも兼ねての訪問でした。病気の話なのでここで詳細を述べることは控えますが、マエストロの全盛期をよく知っているだけに、無理とは分かりきっていてもまたあのステージを見たいという気持ちに変わりはありません。いや、そうでなくてもせめて元気になってほしいと・・・。実は東京でも、この11月12日(土)にセンテーリャス氏チャリティーを趣旨とした「第2回チャランゴの集い」をみなさんの協力を得つつ開催予定です。
その「チャランゴの集い」に今秋の来日公演の合間をぬって特別出演を快諾して下さったのがもう一人のマエストロ、エルネスト・カブール氏です。そのカブールさん、昨日ラパス市内を歩いていてばったり出会い、いきなり「久しぶり!、家に来てチャランゴ見て行かないかい?」。有難いお申し出にのこのこついて行ったのですが、実際にはチャランゴを「見る」どころかマエストロはいきなり家にあったチャランゴで懐かしの自作の名曲の数々を弾き始め、もう1台ころがってたチャランゴを僕に渡して「ほら一緒に弾きなさい」というような目配せ。それは結局2時間も続き、これまでの氏のレパートリーで疑問だった細かい箇所なども本当に丁寧に教えてもらえたどころか、また復習が必要だから近いうちに来なさい、とまで・・・。
自分がチャランゴを始めてはや4半世紀、これまでに影響を受けたマエストロはたくさんいますが、その楽器の歴史に残るような巨匠にお会いするたびに、チャランゴ音楽そのものはもちろんなのですが、それよりも人間性というものに深く感動させられます。頂点を極めた人たちなのにちっとも尊大な態度を示さない、こういうアーティストたちの存在こそがラテンアメリカという懐豊かな大陸がかかえる大きな宝物ではないかと、その度に痛感するのです。
(ボリビア・ラパスにて。)
(左)カブール氏(9月6日) (右)センテーリャス氏(9月3日)
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