月日のうつろひ 2008. 10
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10月1日 (水)  マエストロ・センテーリャス氏の近況報告

少し遅くなってしまいましたが、
この8月末にスクレに滞在した際に
ボリビア・チャランゴ界の至宝で、
(日本のチャランゴ関係者はご存知かと思いますが)
かねてからアルツハイマー病で入院中の
ウイリアム・エルネスト・センテーリャス氏の
お見舞いに行った時の様子を少し述べます。

1945年生まれのセンテーリャスさんは現在63歳、
今年で同病を発症して7年になります。
口語によるコミュニケーションはほとんど不可能ですが、
昨年同じ病院で会った際にはかろうじて鉛筆で
筆談ができました。
多くの人々を認識することはもうできない状態ですが、
昨年もそして今年も僕のことをはっきりと
分かってくれました。

今年お会いして悲しかったのはその筆談も
不可能な状態になっていたことです。
それでも肢体にはなんら不自由はなく、
歩行も健常者同様にスムースです。

スクレのチャランゴ関係者をはじめとする
マエストロの知人友人らの中には、
コミュニケーション能力が日々衰えていると
いうことを本人が意識できることから、
結果的にご本人を悲しませることになるので
面会は控えた方が良いと主張する人もいます。

でもセンテーリャスさんにとっては、
けっして今のマエストロの状態は「孤独」なんかではない、
いつも彼を尊敬してやまない友人が訪ねてきてくれる、
と意識してもらうことがこの病の深刻化を
やわらげる一助になるという、
病院側の意見も存在します。

率直に言って、僕も毎回面会させてもらうごとに、
悲しみで胸がはりさけそうになってしまいます。
でもなんとか笑顔でマエストロとコミュニケーションとろうとする時、
そしてマエストロがそれに一生懸命応えてくれて、
時には別れの際に両肩を抱きしめてくれて泣かれる時など、
やっぱり会いに来て本当によかったと感じます。

日本で06年11月に「第2回チャランゴの集い」の形で
来日中のエルネスト・カブールさんも含め
チャリティーをした際にも、
少しは恩返しができたらという感情でいっぱいだったのを
思い出します。
また、幸いにも自分が毎年のようにボリビア・スクレを
訪問できる環境にあるということにも感謝しています。

(以後、ちょっと思い出話・・・・)
思えばセンテーリャスさんに初めてお会いしたのは
88年の初来日ライブ、大学時代の大阪での話でした。
小さな会場だったので打ち上げで意気投合させてもらい、
以後ずっと文通(←古風!)が続き、
またボリビアに行くたびにご自宅に呼ばれては
たいそうよくしていただきました。

時は過ぎて97年にラパスで開催された
「第1回国際チャランゴフェスティバル」に招待いただき、
また同年、センテーリャスさんの当時まだ1歳だった息子さん
の洗礼式にパドリーノ(カトリックでの代父)として依頼され、
結果、そのお子さんはファーストネームを「ダイジ」
セカンドネームを父親の「エルネスト」、
つまり「Daiji Ernesto Centellas」として正式にラパス市に
住民登録されました。

そういうこともあって以後もますます深く親交は続き、
98年からのラパス長期在住時には家族ぐるみのおつきあい、
また、99年にはわずかな期間でしたが、
マエストロのギター伴奏もさせていただきました。
ふたりで僕のマンションの一室で何時間もリハしたのを
よく覚えています。
言葉では言い切れないほどいろいろな教示を賜り、
最高に幸せな想い出です。

・・・と、昔話は尽きないのですが、
話を現在に戻しますと、
今回のお見舞いでは、
専属の看護師さんからもぜひチャランゴを
演奏してほしいということだったので、
数曲ほどですが(Ven a mi, Siembra de amor,
Chaquiras de luz, Recuerdos de Sucre, Reencuentro...)
センテーリャスさんの名曲をその場で弾きました。

マエストロは涙流されました・・・・。

でもセンテーリャスさんご本人の音楽によって
世界中のどれほどの人々が
「涙したくらいの」感動を覚えたか、
そして現在世界中で活躍中のほとんどのチャランゴ奏者らが
この楽器にたいするこれほどまでの愛情をつぎこむ
大きなきかっけになったか、
そういう意味で、今改めて言いたいです。

センテーリャスさん、
チャランゴを通じてこれほどまでに豊かな満ちた人生を
分け与えてくれてありがとう!、
そしてこれからも本当にお元気でいて下さいね!!

センテーリャスさんHP(ヨーロッパのチャランゴ関係者による運営);http://www.centellas.com/maestro_del_charango.html


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