チャランゴの集い

2004年12月5日ボデギータで行われました「チャランゴの集い」は大盛況で幕を閉じました。ご来場の皆様ありがとうございました。ここで、当日の演奏を振り返り、記録として残しておきたいと思います。

前夜は台風の影響で暴風雨だった。昼になっても風が強く、電車の運行が遅れ気味だった。客足が鈍ることを心配していたが、そんな心配は全くなく、2時半ころからお客さんがどんどんやってきて、3時までにはほぼ満員だった。3時を少し過ぎて開会。福田大治氏(以下ダイジート)が挨拶をし、その中で実に11年ぶりにチャランゴ奏者のイベントが開かれることを述べ、この会の重要性を強調した。司会は岩崎さんという方にお願いした。
出演者もさることながら、観客にもルイス・カルロス・セベリッチ(ロス・トレス・アミーゴス)や、MAYAのメンバー他この世界の著名な人がたくさんきて始まる前から盛り上がっていた。

最初が私(Ishino)の演奏。いきなり演奏するのは緊張するので、トークにジョークを交える。果たしてその効果はあったのか?逆に観客を白けさせてしまったという話も・・・。1曲目はドナート・エスピノッサ作曲のYUNGAS。ダイジートにギターを弾いて貰う。続いてアントニオ・ラウロ作曲のベネズエラのワルツでVals No.2。犬伏さんにギター、ダイジートにクアトロを弾いて貰う。自分の中でもベストの演奏ができたと思う。最後にバッハ作曲の「フルートのためのソナタ」。これはこの日のために先月から練習をしていたもの。かなり早い曲で難しい。この3曲はいずれも私の「チャランゴ修行」のページでタブ譜を掲載しているので、演奏してみたい人は参考にしてください。

続いてリッキー・ロドリゲスさん。3曲すべてオリジナル曲。最初はMI CHIQUITAというワイニョの曲。今回初演だそうだ。2曲目はタイトル未定のカルナバリートの曲。その場でタイトルを募集したら「ボデギータ」と声があがった。3曲目は犬伏さんをギターに加えてpara llagar a tiというワイノの曲。会場から手拍子がおこり盛り上がる。リッキーの奏法は直線的な感じで力強さと繊細さを持ち合わせている。

3人目は小黒謙治さん。小黒さんはこのあと2部で演奏するルイスさんのチャランゴを聴いてこの世界に入ってきた人。好きな演奏家はエルネスト・カブール氏というだけあって、その演奏もカブール氏そのもの。使用しているキルキンチョのチャランゴも以前カブール氏が使っていたものを譲り受けたそうだ。1曲目はチャランゴのソロで「石の巡礼」。ベテランの味わいがある演奏だった。2曲目はFiesta en el Tambo。これもカブール氏の曲。ギターの伴奏はダイジート。目をつぶって聴いていると本当にカブール氏がそこで弾いているような感覚に陥る好演奏だった。会場からもブラボーの声が挙がる。最後はケーナに仙台からかけつけた高橋易宏さんにゲストで入っていただき「満月の夜」をハイラスばりに演奏。高橋さんと小黒さんは20年来の知り合いだけど、一緒に演奏するのはこれが初めてとい歴史的なステージとなった。

1部最後は貝谷吉浩さん。衣装をビシッと決めて登場。ボリビアのドクトルが着る黒のレビータで、ボリビアで購入したものとか。1曲目と2曲目はスクレ地方に伝わる12弦チャランゴを使ったプンテアドール奏法でクエッカとバイレシート。伴奏は犬伏さん。3曲目はマウロ・ヌニェスタイプのチャランゴに持ち替えてカランペアードのソロ。4曲目はHirokoさんとAikoさんと3人のトリオ・チャランゴで曲はドン・マウロのPoncho Ponchito。5曲目も同じメンバーでCharangologia。サイズの違うチャランゴ3台での演奏は厚みがあって心地よかった。

休憩を挟んで第二部は保坂幸恵さんと夫の大介さん(ギター)。今回出場の中で紅一点。さすがに息のあった演奏で、二人ともとても楽しそうに演奏していた。あとで聴いたら内心は緊張しまくっていたらしいけど、そうは見えなかった。1曲目はLAS IMILLASというワイニョの曲。これは本日第一部に出演した小黒さんがチャランゴの教則ビデオで弾いているのを見て練習したものだそうだ。2曲目はエル・アリエロ。無伴奏。観客は息を飲んで聴き入っていた。3曲目はEddy Navia作曲のPrimavera de los Andes。これも聞き惚れる名演奏で、大介さんのかけ声も良かった。


次はルイス・サルトールさん。ここからラストに向けては怒濤の展開となり、観客も息をつく暇がない。ルイス・サルトールさんは日本語も上手でトークで観客を盛り上げる。先週から名前を5様(ヨン様でなく)と変えたと意表をつくギャグが飛び出た。1曲目はチャランゴ・マスターの曲から、第19番・第20番。かなりユニークで斬新な奏法・曲だった。2曲目からはエンターテイナーの本領発揮といったとこで、観客をのせてTecnico de Andinoという曲。ルイスの歌に続いて観客も歌ったり、ラジオのDJばりの語りを交える。Fantasia de Charangoの第三楽章。ハイコードを多用した現代風曲。最後はMambo de Charango。会場がマンボ♪マンボ♪マンボ♪♪の歌声で溢れる。

2部3人目はダイジート&犬伏さんで、1曲目はアルゼンチンのダニエル・ナバーロ作INTI YACU。貫禄の演奏はさすがの一言。あっという間にダイジ・ワールドに引き込まれてしまった。続いてダイジートのオリジナルで、発売中のCDに収録されているSoñar Despiertoというバイレシートの曲。この曲を含めて、CDの曲はダイジートのWEBサイトで視聴できる。このサイトは12月4日、つまりこの日の前日に晴れてオープンとなったものだ。ぜひ一度ご訪問を。→福田大治WEB SITE。3曲目はGilberto Rojas作曲のVelo de la Novia。私もマラカスで参加。最後がCamino a Chuquisaca。この演奏でルイス・カルロスが故郷のバジェグランデを思い出したといって感動していた。これでもチャランゴの伴奏をさせてもらった。ダイジートはこの曲をつま弾きでメロディを弾きながら歌っている。簡単そうに見えて実は難しい。

さて、満を持して最後の奏者、TOYO草薙さんの登場。そして驚くことに、伴奏は8歳の左利きのギター奏者。菅沼聖隆(まさたか)くん。苗字からわかるように菅沼さんのご長男である。彼にとってはこの日が多くの人の前に立つデビューとなった。ステージ上でもまったく動ぜず落ち着いて演奏していた。草薙さんのチャランゴはいつもながらにすごいけど、この組み合わせに会場も驚いた。曲目は「逢いたい……」「僕たちの未来」、「ティコティコ」。伴奏者が犬伏さんに代わり「願い星」。犬伏さんは結局この日5人の奏者の伴奏を勤めた。最後にオトラの声があがり「アカタンカ」を演奏。

最後に私が閉会の挨拶をし、ルイス・カルロスさんにコメントしていただく。そのあとなぜか最後に演奏者全員で演奏して終わろうということになり、セニョラ・チチェラを大合奏。口にしている歌詞がみんなバラバラだけど、この際楽しければ気にしない。にぎやかにエンディングを迎えた。

最終的に入場者数は67名。演奏者など含めて合計80人ほど。大盛況で幕を閉じた。
出演者をはじめ・お手伝いいただいた方、当日いきなりPAをしていただきました草薙さん、岡田さん、本当にありがとうございました。